「俺の服、変?」

「そ、そんなことないよっ。 凄く似合ってるなって思ったのっ」



ついつい、柚希くんのことをジーッと見てしまった。

慌てて首を横に振りながらも、なんだか恥ずかしくて顔が熱くなる。



「柳井も似合ってるよ?」

「えっ……わ、私なんて全然っ、ただの私服だしっ」

「俺もただの私服だっつーの」



けらけらと笑う柚希くんが、

ポン と私の頭の上に手を置いた。






「私服、凄く可愛いよ」

「……っ……お、お世辞なんていいよっ」

「いや、そんなんじゃなくて」


「あのっ……私を誉めたって何も出ないからねっ……」



柚希くんの手から逃げるため、サッと左に動く。

私たちの距離が少しだけ遠くなり、当然 手も離れた。


……なんだろう。

胸がドキドキして、顔がさっきよりも熱くなる……。



「ほ、ほらっ、もう行こっ。 この様子だと、電車も かなり混むと思うからっ」



柚希くんと視線を合わせないまま、彼のシャツの袖を引っ張る。

ドキドキが治まらないまま切符売り場へと向かい、混雑する列へと並んだ。