オモチャ屋さんで駄々をこねたことは一度もない。
人形とかおままごとセットとかファミリーゲームとかほしいとおもうものはたくさんあったけど,それらは皆一様に泣いてほしいがるほどでのものではなかった。
そんな私が初めて『泣き落とし』という技を使ったのは宝石店だった。
ガラスケースの上におかれた星の形をしているコンパクトミラー。
それはコンパクトの表面全体に宝石のようかキラキラのラインストーンが施されていて、子供心に私は信じて疑わなかった。
本物のお星様だと。
そのコンパクトミラーは非売品で、いわゆるオマケの品。 商品を買えばもれなくついてくるそれがほしくて、どうしても手に入れたいと思った私は両親にせがんだ。
それを手に入れるには『三万円以上ご購入いただいたかたに…』という断りがきがって無論お父さんは首を左右に振るだけで娘のおねだりを受け入れてくれようとはしない。
それでも私は引き下がろうとしなかった。