ゴク、と一之江先生の言葉を聞いた博は、グラスに入っていた炭酸のジュースを飲み干す。
「辛いよ」
「お、素直になった」
辛いに決まってる、と小さな声で呟く博。
一之江先生は、「だろうな」と頷きながら言う。
「昔から理依は、俺の気持ちを読み取るのが得意だな」
「だから敬語なしなの俺だけなんじゃん」
乾いた笑顔を見せる博に、一之江先生は得意げに笑顔を作る。
「雫が他の男に取られたのは悔しいけどさ」
「けど?」
「雫が見たことのない顔で笑うから、今幸せなんだって思い知らされた。……雫が幸せなら、俺はいいんだ」