「……ワケあり、みたいだね」
彼は「どうしようか……」と前髪をかきあげた。
優しいんだな、彼は。
見ず知らずの幼い私に、こんなにも親切にしてくれて。
「あ、そうだ。俺の家、来る?」
「え……?」
突然の言葉に、私は目を丸くする。
そんな私を見て、「よかった、声出せるんだね」と冗談半分で言った彼。
「僕の名前は、素野 博【ソノ ハク】。中3で、王雷【オウライ】っていう族の幹部やってんだ」
「……雫【シズク】」
「雫ちゃんか。可愛い名前だね」
初めて会った人だけど、信じられる人。
私の直感は、いつだって当たる。