■ ■ ■ それは私が、小学校五年生になりたての頃。 全てを失ったのは、そんなもうすぐ春が終わりそうな時期だった。 『ただいま!』 『おかえり、雫』 私のお母さんはとても美人で、お菓子作りが趣味。 毎日のおやつは、お母さんのお手製。 『おかえり、雫!今日のおやつは、ドーナツだって』 『やったあ!』 私には一人の姉・夜月【ヨヅキ】がいた。 夜月は、私と二つ歳が離れているが、とても仲が良かった。