『もう、嫌……』
俺の頬からお母さんの手が、離れていく。
お母さんは、割れてしまった写真立てが落ちている床に、力が抜けたように座り込んだ。
昔は、俺が笑うとお母さんもお父さんも笑って
俺が泣くと、お母さんもお父さんも慰めてくれた。
『――瑛士の笑顔を見ると、笑顔になるわ』
『ああ、そうだな。こっちまで元気になる』
そう言ってくれたお父さんとお母さんの姿は、今じゃもうどこにもない。
見つからない。
もう、あの時には戻れない……。
たとえお母さんとお父さんにとってあれが既に“忘れたい過去”でも、俺にとっては“大切な思い出”で。
決して崩れてはいけない、かけがえのない“光”だったのに。