実の息子に対して、どうしてそんな怒り狂った目で見れるんだ。
お父さんとお母さんの子なんだから、似てくるに決まってる。
理不尽な八つ当たりに、俺は目眩さえしてきた。
お母さん……、俺はお父さんじゃない。
俺は、瑛士だ。たったひとりの、息子だよ。
『……あたしの何がいけなかったの!?どうしてどうしてどうして……!!
どうしてあたしが、こんな気持ちにならなくちゃいけないの!!!!』
ヒステリックに叫ぶお母さん。
俺の頬に添えられたままのお母さんの手に、だんだんと力がこもっていく。
ピアニストにとって、大切な指。
その指に、怒りが溜まっていってるかのようだった。
お母さんの瞳に、もう俺は映っていない。
俺はその時、そう思った。