『お母さん、足が……!』
俺の心配も、今のお母さんには届いていない。
痛みも、不安も、愛も、なにもかも忘れてしまったお母さんには。
ただ持っている感情は……怒りのみだ。
お母さんは俺の前に立ち、俺の頬に手を添える。
その手は、前と同じように優しくて、一瞬泣きそうになった。
『お母さ……』
『だんだんあの人に似てきたわね』
けれど、お母さんが発した声は、とてもつなく冷たかった。
殺意さえ芽生えてしまっているかのような、お母さんの声が胸に突き刺さる。
『あの人の顔なんか、もう二度と見たくないのに……っ』