すると、お母さんの細くなった目が俺へと向けられた。




お母さんの目が、……怖い。


なんにも映っていない真っ黒な瞳に、俺は初めて恐怖を抱いた。







『……瑛士』



『!』






お母さんの声で、久し振りに名前を呼ばれた。


だけどその時に感じたのは、嬉しさなどではなかった。






震えるくらいの、恐れ。







別人みたいだ。


お母さんなのに、お母さんじゃないみたいな…。






お母さんは、割れてしまった写真立てを踏みながら、俺へと近づいてくる。



お母さんの足は、少し血が出ていた。