そして、お父さんとお母さんは離婚し、お父さんは家を出て行った。


お母さんの目は、何も見ていないかのようだった。







『……お母さん?』



『……』







俺の声に何も返答はない。



俺がいるよ。

ひとりじゃないよ。





そう言いたいのに、


たとえ言ったとしても、聞こえないんだろうな。





だから俺は、声にはしなかった。


ただ、お母さんの手に自分の手を重ねた。






お父さんがいなくなっても、俺がいる。


お母さんの隣には、ずっと俺がいるから。







そう伝えるように、俺はお母さんの手をギュッと握り締めた。