『――ただいま、お父さん』




僕は、『ただいま』と言うことをやめなかった。



いつかお父さんが『おかえり』と笑顔で迎えてくれる。


そう信じて。





けれど、その日も、『おかえり』と言われることはなかった。






……あれ?何この匂い。



お酒……?





鼻を覆うほどの臭さに、僕は眉間にしわを寄せる。


お父さん、普段ならお酒なんて飲まないのに……。






僕は不安になって、『お父さん!』と呼びながら駆け寄る。






『!』