『お父さん、どうしたの?』 『ごめんな、郁人』 『え?』 『お父さん、仕事クビになったんだ』 お父さんの言葉は、小学二年生の僕でも理解できた。 仕事を辞めさせられた。 だからお父さんは、こんなに暗いんだ。 『ごめんな』 『お父さん……』 こういう時なんて言えばいいのかわからなくて、僕は何も言えなかった。 もしお母さんがいたら、なんてありもしないことを頭で考えていた。