友達なんて、いない。味方なんて、いない。そう思っていた。なぜならば――……。
「やーよいっ」
そう言われて振り返った瞬間、私の頭に何かをかけられた。
「コレ、ごみ箱に捨てといてくんない? 古都弥生さん」
そう言って私にごみを頭からかけてきたのは、髪をポニーテールにまとめたクラスの人気者、飯田花梨(いいだ かりん)と過去にいじめられた事がある夢井伊織(ゆめい いおり)と、ギャルみたいでお調子者の赤原カナミ(あかはら かなみ)。
私は去年まではこの3人と一緒に楽しく遊んでいた。
でも些細な事で私は仲間外れにされて、いじめのターゲットにされたのだ。
……私があの時、ちゃんと周りを見ていればこんな事にはならなかったのかな……。
私は散らかったごみをごみ箱に捨てて自分の席に座って本を読み始めた。
いつになったらこのいじめは終わるんだろう……。
――キーンコーンカーンコーン……。
授業の始まるチャイムが鳴った。
挨拶をして筆箱の中のシャーペンを出そうとしたら……。
「――痛っ!!」
筆箱の中に、画鋲が詰めこまれていたのだ。
「古都さーん、授業に集中しなさーい」
先生にそう言われ、私は「すみません」と言った。花梨達3人を見てみると、クスクスとこっちを見て不気味に笑っていた。
そしてクラスの皆は見て見ぬふりをしている。
皆、花梨達が怖くて私を助けてくれない。私を助けたら次は自分がいじめられる。そう思っていると思う。
正直、いじめられるよりも見て見ぬふりをされる方が辛い。
授業が終わり、鞄を持って帰ろうとした。すると、あの3人が私の前に立ちはだかった。
「古都さん、ちょっといい?」
『なんで?』という前に私は腕を掴まれて連れていかれた。
着いたのは体育館裏。
「……なんの……用なの……? もう……私をいじめるのをやめてよ……!!」
「あたしさー、いい事思い付いたんだよねー」
伊織が私を見てそう言った。
「な……に……?」
「明日からあんたは私達のいうことを聞くの。つまり、奴隷。いいでしょ? 花梨、カナミ」
「……そうね」
「さんせーい☆」
「じゃあ決定ね。古都さん、明日からあなたは奴隷として頑張りなさいよ」
そう言って3人は帰っていった。
……奴隷……か。
いじめられるよりはマシかもしれない。
家に帰ると親が言い合いをしている。
毎日毎日、懲りないなぁ……。
私はお風呂に入ったあと、布団に入って寝た。
翌日。学校に向かって歩いていると、声をかけられた。
「やーよい! あたし達の鞄、教室まで持ってってねー♪」
そう言って3人は私に鞄を持たせて歩いていった。
「弥生……大丈夫?」
後ろから声がした。振り返るとそこには、山吹夕子(やまぶき ゆうこ)がいた。
この子は私の友達“だった”人。なんで過去形なのかって?それは――……。
「夕子には関係ないでしょ。ほっといてよ、私の事」
「なんで……? 私達、友達でし――」
「あんたなんか友達じゃない!!!」
そういって私は、教室まで走った。
なによ……。
なによ、私を裏切ったくせに!!!