「ヒャァッ! ごめんっ、ついつい」



慌てて体を離すと、何だか急に恥ずかしくなってきて、既に変わっていた信号を急いで渡りはじめた。


そんな私の様子を見てか、後ろからクスクスと笑い声が聞こえる。


さらに恥ずかしさを増した私は、振り返ることができず俯いたまま歩いていた。


沈黙は続き……

信号を渡りおえて少ししてから、先に私が折れた。



「ねぇ、智輝」


「んー?」


「本当にありがとね。何かあったら相談に乗ってもらってもいいかな?」


「あぁ、俺でよければいつでもどうぞ」



智輝がくれた言葉に、ようやく顔を上げる。


本当に、いい男友達持ててよかった。


後ろを振り返って、智輝の姿を捉えて笑顔を向ける。


その時には、すっかり恥ずかしさも忘れていた。



「ありがとー! 智輝って本当に頼りになるね!」


「うーん、そうかな?」


「うん、私のお兄ちゃんになって欲しいくらい!」


「ハハッ、玲花の兄貴か……遠慮しとく」


「え〜っ、ケチ〜」



そんな感じで、楽しく会話しながら駅まで一緒に帰っていった。



私は……智輝から慎司の気持ちを聞いて、少し浮かれていたのかもしれない。


この時バックの中の携帯の着信に気付いていれば……。


これから先起こる未来は変わっていたのかな……。



ブーッブーッブーッブーッ

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 慎司

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