「いいこと教えてあげようか?」



信号待ちをしている智輝が、振り向いて私の顔を覗いてくる。


……いいこと?


そんなこと言われたら聞きたいに決まってるじゃん!


まるで餌を与えられる前の子犬のように話しに飛びつく。


そんな私を見て「落ち着いて?」ってなだめる智輝。



そして……


「慎司には秘密な」って言って、口元を指で押さえた。



「慎司ね、玲花の飾らないとこに惹かれたんだって。駆け引きもしない純粋な玲花に、心奪われたんだって言ってたよ」



慎司が?


私のことそんな風に思っていたんだ。


聞いたことなかった、どこが好きかなんて。



こんな街中でダメだと思っていても……


顔がにやけちゃう。



「あいつ……マジで玲花に惚れてるよな、俺が触れるだけでも嫌な顔見せるし」



いつものように私の肩を叩いて、笑顔を向けて話しを続ける。



「だから、あまり不安になることないんじゃない?」



さすが……。


私が不安になっていたことなんて、お見通しってわけね。



「智輝ー!!」



私は周りの目を気にすることもなく思いっきり抱きついた。



「ありがとね」



少し見上げてニッコリと微笑む。


智輝は笑顔を返しつつも、少し困った表情を浮かべた。



「うーん、俺的には美味しいけど……この態勢はどうかと。誤解されるよ?」