学校から駅までは20分くらいの道のり。


傾きかけた日が、少しだけ空を紅く染め始めていた。


私の歩幅に合わせてゆっくりと歩く智輝。



「ごめんね。一緒に帰ってもらって」



慎司に言われたように、私は智輝と帰ってもらっていた。


少し前を歩く智輝は、私に顔を傾けた。



「いいって。前はよく四人で帰ってたしな」


「……あれっ、そういえば今日千理は?」


「あいつも用あるらしいよ。……少し様子がおかしかった気がしたんだけど」


「えっ……?」


「いや、勘違いかな」



ふーん、まぁいっか。


そういえば、智輝と二人って久しぶりかも。


さりげなく私の前を歩いて先導してくれるあたり、そこらの男より、ずっと大人だなぁ……なんて思う。


容姿もよければ性格もいいのに。



「何で彼女つくらないの?」



不思議に思って問い掛けてみる。


その場に立ち止まった智輝は、大人びた表情をして微笑んだ。



「本気のやつとしか付き合いたくないから……かな」



そう言うと少し空を見上げ、再び歩き始めた。


その姿がいつもと違って妙に切なく見えて……。


これ以上、この話をしてはいけないような気がして、私は黙り込んだ。