ーキーンコーンカーンコーン
学校中に二時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
私が仕事をしている、保健室にもそれはうるさく鳴る。
雪名 紫(ユキナユカリ)、23歳。
職業、養護教諭。
いわゆる保健室の先生。
学校のオアシス、保健室で傷ついた生徒を手助けする。
それが私の仕事。
今働いている高校には、去年新任教師としてやってきた。
初めての仕事。
しかも生徒が大勢いるマンモス校。
そんな学校で、緊張しながらも切磋琢磨する日々を送り
はや一年。
毎日うるさく鳴るチャイムにも、
昼休みになるとわらわらとやってくる女子生徒にも、
もうすっかり慣れた。
ただひとりを除いて。
ーキーンコーンカーンコーン
二時間目終了のチャイムに続いて、休み時間終わりを知らせるチャイムが、もう一度鳴った。
来る…
カチッと、壁に掛けてある時計の針が動く。
ーガラッ
「センセ〜、おっはよ〜」
やっぱり……
私の期待を裏切って、ソイツはやってきた。
「・・・・」
「なんだよその目。オレ、病人なんだけど〜」
毎日毎日ちゃっかり三限目が始まる時間にやってくるコイツ…。
この男に私の脳みそは悩まされている。
「……今日はどんなご用件でしょうか」
「あっはっは〜!なにその言い方!」
お腹を抱えて笑うコイツ。
そう、コイツは……
「今日はちょっとお腹痛くてさ〜、ベット貸してくんない?」
仮病常習犯。
「昨日もそう言ってたでしょ、帰りなさい仮病君」
「ケビョウクンってなんすか…!本当にお腹痛いんだって、オレ」
ケラケラと笑いながら、彼は奥にあるベットに潜り込む。
するりと。
まるで猫みたいに。
「ちょっ、こら!」