…気持ち悪くなりました。
耳だけでなく、私は肌も敏感なんです。


裸足のまま、セメントの壁のスキマをくぐり抜けました。

海から離れても肌と髪に残ったベタベタ感と、足にくっ付いた砂は取れません。
私の記憶の中に残る、黒歴史と一緒。
忘れようとしても忘れられない。
イヤな気持ちは膨らんで、ますます心を暗くしていく。



……漢字の読めない私は、同級生から常にバカにされてきました。
覚えられない苦労を知りもしない人達のことを、『トモダチ』とは呼べませんでした。

優しい人もいました。
でも、ウラではやっぱり私をバカにしてました。

それでも、1人になるのはイヤだった。
どんなにウラでバカにされてても、一緒にいたかった。

表面的には1人ではなかったです。
でも…ココロはいつも1人でした。

会話するのにも疲れました。
理解できない言葉が多くて、意味の違う返事をしてたら…


『話の通じない人』

そんなレッテルを貼られてしまいました。

…話しかけられるのが怖くなりました。
それでも、学校へ行かなければならない…と言われ続けました。



『…ののちゃんは、大ちゃんみたいにならないよね?』

お母さんの言葉には一番の毒があります。
学校へ行けなくなった大ちゃんのことを、お母さんはいつも嫌ってたから。

『…ののちゃんは、頑張れるよね?』

苦しくて、頭が痛くて、お腹も痛くて、どんなにココロが真っ黒でも……

『…うん!ののかはダイジョーブ!』