あの頃と同じように、靴と靴下を脱ぎました。
裸足になって歩いたら、砂はとても気持ち良かった。

ジャリジャリもしないし、ザラザラもしない。
パウダー状の中に足を入れてるような感覚に、ウキウキしてきます。
大きく音が響きます。
目の前が、パァーッと開けてきました。

白い波が、はるか沖の方から、青い水と共に押し寄せてきます。
寄ってきたと思ったら返っていきます。
不思議なくらい何度も何度も繰り返してます。

…面白いな…と、思いました。
繰り返し寄ってくる波に、少し感動しました。
でも、同時に怖くて、それ以上は近づけません。

立ったまま、じっと海を見つめました。
波を見てると怖かったので、ずっと先の方を見つめました。
海の上は光が沢山集まってました。
雲の白さが映ってるような気もしました。
眩しくて、目を細めます。
真っ直ぐな海の端っこ。
あれが、水平線なんだ…と知りました。


「ピュールルルル…!」

昨日とはまた別の音がしました。
波の音に混じって聞こえる鳥の鳴き声。
甲高い声の主は、『ワシ』かと思ったけど、後から『トンビ』だと教えられました。

時折、吹いてくる風の音も、昨日とは全然違います。
ざわざわ…ではなく、ピューピュー…と聞こえました。

…不思議なくらい、落ち着けました。

昨日は、山の上で寝ようと思いましたが、海岸では眠れない…と気づきました。
何故かと言うと、ベタベタした感触が襲ってきたから。
肌についた塩気のせいなんだ…と、後になって知りました。
足に付いてる砂の感触も、あのイヤな砂場のと似てきました。