家々の連なってる道は、なるべく早く通り過ぎようと走りました。
走るのは好きです。
早くはないけど。

走ってると、嗅いだことのないニオイがしてきました。
塩っぽい…と言うのでしょうか。
ワカメのニオイ…と言うべきでしょうか。
これが、潮の香りなんだな…と思いました。

海に来たことはありません。
テレビや写真でしか見たことありません。

だから、今日が初めての海です。
道に砂が混じり始めました。
微かに音が聞こえてきます。

セメントの壁が見えます。
音はその壁の向こうからしてきます。
壁の手前に、『この先、防風林』と書かれた看板が立ってました。

壁の高さは3〜4メートル。
私の倍以上もあります。


(越えられないなぁ…)

壁の向こうには行けないのか…と思いました。
でも、少し歩くと、壁にスキマが空いてるのが見えました。

「ここから行けそう…!」

ワクワクしてきます。
初めて見るホンモノの海。
どれだけ大きいか、想像もつきません。

壁のスキマを通って、足を一歩踏み入れたら……

ズボッ!

砂の中に足がハマりこみました。
砂場のイメージと同じでいたけど、全然違う感触でした。

砂はサラサラしています。
靴の中は砂だらけ。
ハマり込んだ後も歩く度に入ってきます。

ジャリジャリしてイヤだな…と思いました。
イジメられてた頃を思い出しました。

小学生の頃、何もしてないのに、靴の中に砂を入れられました。
泣いても泣いても、やめてもらえませんでした。