オムライスがあったかいうちに、一人きりの晩ごはんを食べた。
ごちそうさまをして、食器を片づけ、部屋に引き上げる。
顔が勝手に笑ってしまう。
だって、今日、すずは冒険にでかけるのだから。
ああ、ママ、大丈夫だよ。
ママを傷つけたりはしないから。
ママは、いい子のすずを信じたままでいいからね。
ママはとてもデリケートだ。
だから、すずはママといるとき、優しくてきれいな心を働かせる。
ピアノを弾くときと同じだ。
「すずちゃんのピアノは、優しい音色で、女の子らしくて、すばらしいわ。」
ママも先生も、そう言ってくれる。
すずがいちばん得意なのは、ブラームスの子守歌だ。