シンデレラの魔法がすっかり解けてしまったころ、すずはタクシーで家に帰った。 一文字傷のマーティンをケースに入れたおねえさんは、すずがタクシーに乗り込むのを見届けて、それから地下鉄の駅の暗い階段に消えた。 部屋に帰り着いたすずは、ドアを閉めた。 しーんとしている。 魔法みたいな、夢みたいな、夜だった。 「現実だったんだよね。」 すずの手の中に、おねえさんからもらった白いピックがある。