ママがガレージに車を入れている間に、すずが玄関のかぎを開け、廊下の電気をつけた。


すずは、ドアを背中で支えて、ガレージから歩いてくるママを待つ。


ママはいつもハイヒールだから、歩くのがちょっとおそい。


ママが玄関に入ってから、すずはドアを閉める。



「ありがとう、すずちゃん。


さ、レッスンバッグを置いて、手を洗ってきて。


晩ごはんを温めるわ。」



「はーい。」



すずは、レッスンバッグを抱きかかえて、階段を駆け上がった。


バッグを部屋の入り口に置いて、二階のトイレの洗面台で手を洗っていると、外からクラクションの音が聞こえた。


ママのおむかえのタクシーだ。