「そう。


昔は。


今は違う。


最も敬愛するBのミュージシャンは、ブラームスじゃない。」



「だれ?」



「ビートルズ」



「……だれ?」



「さっきの曲だよ。


すすり泣くギターの歌を書いたジョージ・ハリスンは、ビートルズのギタリストだった。」



おねえさんは、遠くの空をながめるようなまなざしをした。


思わず、すずはきいた。



「恋してるの?


そのビートルズに?」



まん丸な目が、すずを見て、ぱちくりした。



「おませだな、ベル。


そうだね、恋してる。


ビートルズの中でも、いちばんひそやかな彼にね。


初恋はマーティンO―18だった。


いつしかマーティンへの想いは肉親の愛に変わり、同時に、今は亡きギタリスト、ジョージ・ハリスンに恋するようになった。」