おねえさんの右手が、さらりとギターの弦をなでる。
イ短調の和音だ。
そして、ト長調、ニ長調、ホ長調。
吐息みたいな声が、さっきと同じ歌をつむぐ。
呪文っぽい、外国の言葉。
何度もくり返されるフレーズのひびきは、すずも覚えてしまった。
ほゎ、まいギター、じぇぬぃ、うぃー……。
「知ってる曲だった?」
歌が止まる。
止めないで、と、すずは思う。
「今、覚えただけ。」
「音感がいいね。」
「何て言ってる歌?
ギター、っていうのしか、わかんない。」
「正しいよ。
ギターの歌さ。」
そうか。
ギターが泣いている歌だ。