「ママこそ、帰りはすごくおそいんだから、気を付けてね。」



「そうね。


ありがとう。」



すずは知っている。


ママが帰ってくるのは、早くても夜中の二時。


おそければ、朝になってから。


忍び足で家に入ってくるママの体からは、バラの香水とお酒のにおいがする。


朝ごはんのとき、ママはお化粧もバラの香りも落としているけれど、お酒のにおいは消えていない。


お酒のにおいも、ママの真っ赤に充血した目も、すごくいやだ。



お仕事の前のママは、お姫さまみたいに、かんぺきにおしゃれなのに。