美しい旋律の歌ではない。 それは、ピアノでも五線譜でも表せない、とても人間らしい、ギターの歌だった。 ひっそりと、でも高らかに、その人はマーティンを通して泣いていた。 すずはふるえた。 心も体もふるえた。 目の前で音楽を作り出している人とギターは、二つで一つのひとりぼっちだ。 悲しそうで、寂しそう。 すずは、胸全体で、同じ悲しみや寂しさを感じている。