ふと、なつかしいような音がした。
すずは顔を上げた。
「あっ!」
すずはドキッとした。
マーティンを見つけた。
すずのギターと同じ、マーティンO―18だ。
もちろん、ギターだけがそこにあったわけではない。
マーティンの持ち主もいる。
その人は、十字路の中心に建つバレリーナみたいな形の銅像の下で、あぐらをかいている。
マーティンは、その人の右わきと右ひざの間に、しっくりと収まっている。
細いネックは、その人の左手が、すっぽりとにぎりこんでいる。
その人は、いとおしむようにマーティンのボディに左耳を寄せ、弦の調律をしていた。
頭には、白いニット帽をかぶっている。