「よし! そこに相談に行こう!」


「部長、俺が行きます! 田中さんは俺の大事な大事な人なんで俺が相談に行きます!」


「江崎さん、どうどうどう」


「俺が相談に行ってきますよ、部長。」


「そうね、吉富さんが事情詳しいでしょうから相談員の件は吉富さんにお願いするわね。」


「それより田中さんに何かあってからじゃな遅いですよ。蟹江さん、ここはもっと上へ相談した方が良くないですか?」


「と言うと? 坂田さんならどこへ相談するの?」


「警察ですよ!」


「おお、そうだ! 田中君はシングルマザーなんだ! 何かあってからでは遅すぎる!」


部長までも巻き込んでとんでもない会話が透がいなくなった後でも続いた。


そして、透が社長室へと戻って行ったとき、フロアにいた秘書が慌てて透の元へとやって来た。


「専務! 大変です!!」


「どうした?」


「今、警察から社員のDVについての問い合わせが入っていますが。」


流石の透もこの行動力に商品管理部門の連中には頭を痛めた。


社長室で待っていた私の所へ戻ってきた透はかなり青ざめた顔をして私を睨みつけた。


「君はいったい俺のことをなんてみんなに話していたんだ?!!!」


「はい?」


私は透が何に怒っているのか、何を興奮しているのかさっぱり分かっていなかった。


「あの、専務 警察が・・・・」



「なんで俺がこんな目にあうんだ」


頭を抱え込んだ透は暫く動く様子はなかった。


私はまったく今の状況を理解できずに芳樹と二人で秘書が淹れてくれたコーヒーを飲んでいた。