挑発的な吉富さん、心配性の部長や坂田さん、思い込みの激しい江崎さんと、やりにくい社員ばかりが揃っていると頭が痛くなりそうな透。


こんな所は早く出た方がいいと思いみんなを無視しフロアから一歩足を踏み出そうとしたら・・・


「母子を捨てた男は何をするか分かりませんよ、専務。ここはしかるべきところに相談した方がいいです。」


と、蟹江さんまでがとんでもないことを言いだした。


蟹江さんの発言したしかるべきとは・・・・? 透は顔が青ざめていく。


「おおそうだ! 蟹江君、通報したまえ!」


「はい、部長!」


「きっとDVなんですよ! 警察に通報したがいいですよ!」


ここで江崎さんがまた口出してきた。


透は益々顔色が悪くなっていく。


「いや、その必要はないんだよ、君たち・・・」


透が止めに入ろうとしても誰も透の話などは聞いていない。


仲間思いというのか単なる興味本位なのか、ただのお祭り騒ぎが好きな人達の集まりのようにその場が盛り上がっていく。


「だから・・・君たち?」


「大丈夫ですよね! 専務! 社員を守ってくれますよね!」


蟹江さんにそう言われると透は「任せておきなさい」としか言えなかった。


これ以上ここにいると何かとんでもないことに巻き込まれそうで早くこの場を去ったほうが良いと感じた透は逃げるようにその場を離れてしまった。


透がいなくなったと気付いていない皆の話は更に盛り上がり話は勝手に進んでいく。


「ここの託児所にはそう言う専門の相談員がいたはずだ。」


吉富さんはここぞとばかり昔の男退治をしてやろうと思っていた。