「無駄口はそこまで。仕事に取り掛かるぞ。
田中、資料の準備するから君は一緒に会議室へ来てくれ。」
周りとの無駄口を叩いているとお叱りを受けたこの人は、商品管理部門の中で一番人気の吉富さん。
吉富さんはとても素敵な先輩社員で、あまり顔に表情は出さないポーカーフェイスタイプ。
だけど、キザではないし相手のことを思いやる優しさを持っている。
私を捨てたあの男を完全に忘れることが出来れば、この吉富さんには惹かれているかもしれない。
「吉富さんが相手だと江崎君は太刀打ちできないわね。ね、江崎君。」
「そんなことないですよ! 蟹江さん。 あ、でも、もしかしてあの二人って出来てるんですか?!」
蟹江さんが脅かすものだから江崎さんまで本気になっていた。
「おすすめの物件だよ」と、部長が吉富さんを見て言う。
すると、江崎さんは益々落ち込んでいく。
「君は不良債権そのものか?」と部長に言われ更に落ち込む江崎さんだった。
「あははは、可哀想に。なんなら、江崎君には私から良い娘を紹介しよう!」
課長は縁結びをしたがるようで、江崎さんにきっと良い娘さんを紹介してくれるだろう。
「いや・・・その、お構いなく。」と、江崎さんは逃げ腰だった。
そんなみんなの会話にいつまでも参加していると、また吉富さんのお叱りを受ける。
私は急いでノートパソコンと資料を手に会議室へと向かった。