皆の会話が盛り上がっている時に吉富さんは一人その場を離れた。


「彼はどこへ行くんだ?」


透は吉富さんの行動が気になったようだ。



「多分、田中さんのところだと思いますよ。」


「それは保育施設の?」


「はい」


蟹江さんに吉富さんの行き先を聞くと透もその場を離れ保育施設へと向かった。


まるで吉富さんの跡を追うように保育施設へと向かったが、透が着いた時には私と吉富さんが一緒にいるときだった。


すでに二人で会話をしている時だった。


透は私に気付かれない様に柱の陰から私たちの様子を見ていた。


そうとは知らずに私は吉富さんと話し込んでいた。


「仕事探しは順調なのか? 無理して辞めなくてももう少しここで頑張ってみてはどうだ?」


「いいえ、もう決めたんです。」


そう、今更会社に残るとは言えない。透にもあれだけ啖呵を切ったのだから。


「芳樹君はまだ手がかかるだろう。職探しは無理じゃないのか?この先の生活だってあるだろう?」


私が今一番考えていること。少しでも早く次に職を見つけなければならないのに。


シングルマザーと言うだけで面接さえしてもらえない。


世の中そう甘くないと思い知らされている。


だから、吉富さんにそんなこと言われると悩んでしまう。


「芳樹君の父親には養育費は貰えないのか?」


貰えるものなら貰いたい。


だけど、そんなことすると芳樹を取り上げられる可能性だってある。


透がお金だけの援助で済ます人ではないと思っている。