私も一瞬声が出なかった。しかし、このままだと透の思い通りになってしまう。


社長秘書課ということはそういうことよね?


私を懲らしめたいの? 何か罰を与えたいの?


絶対にそんなの許せない。


「嫌です、絶対に嫌ですから。」


私は頑として受け入れない。どうせ辞職するのだから怖いものなんてない!


「しかしだね、社長直々の指示だよ。こんなの特例だよ、君。」


人事部長は社長からの指示の為に私を明日の異動を納得させなければならない。


本来なら辞令が出ているのだから問答無用なのでしょうけども。


それでも私の中では「却下」よ!


「分かりました。直談判してきます。」


「田中君!! それだけは止めてくれ!!」


部長は真っ青になって私を止めようとしている。


人事部長は私の態度が信じられないとかなりショック気味だ。


普通ならみんな喜んでなりたい職場なのだろうけど、私には冗談じゃないところだわ。


「いったいどうなっているんですか? 何故、田中に秘書課勤務などが言い渡されたんですか?」


吉富さんもかなりこの異動には悩んでいる様子。


ありえないことが起きていると蟹江さんも首を捻っている。


「それが、始末書を社長宛に送ったのが気に入られた様で・・・」


人事部長もいったい何が起きているのか混乱模様だ。


「田中君はどんな始末書を書いたんですか?」


部長は私の顔を睨むように見て人事部長を問い詰めていた。


「はあ・・・それが・・・」


人事部長は流石にあの始末書の中身を教えられそうにないわね。


普通は他の社員に見せるものでもないし。


「もう、私のことは放っておいて下さい。今週で会社は辞めるんですから。
部長、退職届は受理したんですからね。」


「その辞表なら俺が破り捨てた。ったく、こんな始末書を社長宛に送りやがって!」


始末書を手に持って私の前に透が現れた。


宣戦布告の時がやって来たようね。