加奈子はクスクス笑いだし俺の顔に触れてきた。
加奈子の温かく優しい手に心が落ち着かない。
今すぐ抱き締めてキスしたくなる。
「私が綺麗になりたいのは透がいるからよ。私の幸せは透がいてこそだもの。」
加奈子の手を握りしめ手の甲にキスをするとそのまま抱き締めた。
「人がいるわ。」
「構うものか。」
結婚式を挙げる新婚夫婦なのだからキスの一つくらい大目にみてくれるさ。
そんなことを考えていると加奈子から離れられなくなり俺達はほんの少し甘いキスを楽しんだ。
俺達の衣装を決め芳樹の衣装も決めると後は会場作りだ。
許可をもらった面会室に生花で埋めつくされた祭壇を作り、バージンロードの代わりに人垣で通路を作る。
とは言うものの、この挙式に参加するのは両家の両親と我が家の家政婦だけで人垣を作るような人数はいない。
自分の頭の中のイメージとはかなりかけ離れた挙式になるが、加奈子にとって両親の参列ほど嬉しい挙式はないだろう。
どんなに豪華な挙式でも、どんなに多くの祝福する客がいても、加奈子の両親の存在には到底敵わない。
だから、きっと、この挙式は俺達の心に残る幸せで最高の一日になるだろう。
一生忘れることの出来ない日になる。
「加奈子、とっても綺麗よ!」
涙を流し両手で顔を覆う義母は折角の化粧が台無しになるほどに泣いていた。
そんな義母を見て義父が一喝していた。
「加奈子の最高の日だ。泣くな。笑って送り出せ。」
「だって、本当に加奈子にこんな幸せな日が来るとは思ってもいなかったんですもの。」
加奈子を大事に育ててくれた義父と義母に感謝してもしきれない。
俺は二人の前に行き深々と頭を下げた。
「加奈子さんを幸せにします。絶対に悲しませるようなことはしません。私の命にかけて約束します。」
俺は神ではなく加奈子の両親に誓う。
両親ほど偉大な存在はなく両親ほど温かい存在もない。