「今回の交代は田中には申し訳なかったよ。」


吉富さんが私に謝罪をした。


だけど、吉富さんが謝罪することではない。今回意見が合わなかったと言うより、昔のことがあって外されたのだから。


かと言って、私と透の関係はここでは知られては不味い。


もし透と私の関係が知られれば必ず芳樹の存在が知られてしまう。


そうなると透に芳樹を奪われないとも限らない。


もしかしたら透は奥様に芳樹を育てさせるかもしれない。そうなったら私はどうなるの?


透には去られ芳樹を奪われたら、私は何を支えに生きていけばいいの?!


だから、透との関係を知られたくない。


本当に情けないわね・・・・


透とのことになると、私はやっぱり平常心ではいられない。



「それにしても、交代の腹いせにパソコン壊すかね?」


呆れたように課長がため息をついて言う。


確かに、この行為はやり過ぎたかも?


でも、これくらいやらないと私の怒りが通じないでしょ? 透相手なら十分よ。


「それに専務に向かって資料ぶちまけてたし・・・・」


頭を抱え込んで悩んでいた蟹江さん。


さすがに透は専務という役職なのだからやり過ぎなのか?


いや、これくらいまだまだ手ぬるいと思うけど?



「専務が心の広い人で良かったよ、田中。」


と、安堵するのは吉富さん。


でも、それは罪悪感があるから私に怒れないだけでしょ?


されて当然の報いなのだから。


透は私を担当から外すという卑怯なことをしたのよ。


これくらじゃすまされないわよ。


私の気が収まらない。


だけど、



「すべて私が悪いんです。ご迷惑おかけしました。失礼します。」



蟹江さんや吉富さんには迷惑をかけた。


そして、こんな部下を育てた部長や課長には処分が言い渡される可能性が無きにしも非ずだ。


私はデスクの中に置いていたバッグを取り出すとロッカールームへと向かった。