加奈子が眠っている間に親父達と話し合ったことを全て包み隠さず話した。



親父は社長命令と勝手な事を言ったけれど、加奈子が納得しなければ俺は無理には入籍するつもりはなかった。



けれど、入籍することの大事さを俺と加奈子は話し合い、親父の言う通りに籍を入れ芳樹とは戸籍上も父子となれるように手続きをとることにした。



ただ、加奈子の希望もありまだ俺達の結婚は公にしないことに決めた。



そして、体調不良を理由に1週間会社を休み俺の実家で一緒に暮らしていた。



1週間の間にすっかりお袋や増田と意気投合した加奈子はもう柿崎家の人間として馴染んでいた。



「お帰りなさい。今夜は早かったのね。」



「あら、愛しい妻の顔が見たくてそういつまでも会社にはいられないわよね♪」



「新婚だからそれくらいいいだろう?」



本当ならば加奈子と芳樹の三人で俺のマンションで暮らしたいところだが、吉富の問題が解決しない以上この屋敷で暮らすしかない。



それに、お袋と増田がいてくれることもあり芳樹を会社の保育施設へ預ける必要もなくなった。



そう考えると親との同居と言うのは有難いものだと思える。



「透、今から芳樹とお風呂入ってきたいのだけど。」



「芳樹のお風呂は俺の担当だろう? それとも一緒に入る?」



たまにそんな事を言ってみると加奈子は顔を真っ赤にさせて逃げてしまう。


そんな初心な反応が楽しくて俺は時々加奈子を苛めてみたくなる。



「本当は加奈子さんと二人だけで入りたいのでしょう? 坊っちゃん♪」


「なに言ってるんだよ、増田!」



俺にとっては増田はもう一人のお袋の様な存在だ。


小さい頃から世話になっていて俺のことも良く知っている。


そして、お袋が留守がちだった昔は増田に甘えたものだ。



「私が坊っちゃんをお風呂に入れてたのがついこの前のようだわ。」



「じゃあ今度からは私が洗ったげるね♪」



そのセリフが冗談だったとしても、そんなこと言う加奈子に俺の心臓が止まるかと思った。