芳樹が疲れて眠ってしまったのだろう、増田が気を利かせたのか加奈子のベッドに芳樹が寝ていた。



芳樹の祖父母の家とは言え、ここは芳樹の家となるが初めて訪れた見知らぬ家だ。



親父は顔を合わせたことがあるがお袋や増田は初めて会った。



芳樹が緊張で疲れるのは当然のことだろう。




「眠れなかった? 初めての家だから落ち着かなかっただろうね。」



「ふかふかのお布団でとても気持ちよかったわ。芳樹もほら、こんなに気持ちよさそうに寝てるわ。」



「加奈子、これからの話し合いもしたいけど。その・・・・」




親父たちに邪魔されてキスも出来なかった。



結婚をOKしてくれた加奈子にまだ俺は抱きしめることも出来ないでいる。




「なに? まるで駄々っ子みたいな顔をしてるわよ。」



「キスしたいんだ」



「私も」





さっきまでの不安げな顔をした加奈子はいったい何だったのだろうか?



俺はまだ加奈子を不安にさせているのだろうか。



だけど、抱きしめる加奈子の体にとても心が落ち着き安心できる。



重なる唇に加奈子の愛が感じられる。




「加奈子、愛している。」



「私も、愛してるわ。」



愛の言葉を交わしながら抱きしめあうとまるで楽園の中を彷徨っている気分にさせられる。



こんな時間が持てるなんてまるで夢のようだ。




「俺は幸せ過ぎて夢の中にいるようだ」



「夢じゃないわ。現実よ。透、もっと抱きしめて。私が安心できるように。もっと力強く抱きしめて。」




加奈子の心の中はまだ不安な気持ちが大きいのだろう。



そんな不安を加奈子の心から追い出してやる。



少しでも心の平穏が訪れる様に俺が加奈子を守ってやる。



「加奈子には悪いと思ったが親父たちにある程度の経緯を話したんだ。」



「私の両親のことも?」



俺が頷くと加奈子はまた悲しげな表情へと変わっていく。



そんな顔をさせたくないのにと思いながら加奈子を抱きしめた。