加奈子の体調不良で皆に心配をかけたけれど、今は一転してお祝いムードで盛り上がっている。


家の中がこんなにも明るいのは何時の日振りだろうかと思う。


これも加奈子が居てくれるお蔭だと、きっと、俺だけでなく家族みんながそう感じているだろう。


加奈子は病院の検査で疲れているだろうからとベッドで休ませると俺は部屋を静かに出て行った。


プロポーズを受けてもらったばかりの俺としては、このまま暫く加奈子についていてやりたいが、親父たちが結婚式について話し合いをしたいと言う。


部屋を出る時に不安そうに見えた加奈子だったが、「大丈夫」と声を掛けると加奈子はいつの間にか眠ってしまった。


そんな加奈子の為にもあまり負担をかけた結婚式は控えたい。



「透、今、社の方から連絡が入ったが吉富君は随分張り切って仕事をやっているようだな。部長はかなり彼を買っているが。お前はどうなんだ?」



恍けた振りしていても吉富のことはそれなりに調べているのか。一応、社員を把握するのも社長の務めだ。



「吉富は商品管理部門では申し分のない働きをしています。それに関しては問題ないです。ただ、加奈子の件になるとそうではないと。」



それは俺にも原因はある。これまで加奈子一人に苦労を掛けさせたばかりに、その加奈子を助けようとしたのが吉富だ。


俺が吉富の立場だったとして、俺だってきっと好きな女が困っていたら手助けしただろうし、俺の助けを受け入れて貰えるとそれは俺自身を受け入れて貰えたと勘違いする可能性もある。


きっと、今の吉富がそうなのだと思える。



そんな吉富は困った加奈子に手を差し伸べ、そのまま加奈子を手に入れようと考えているはずだ。



「加奈子さんと吉富君はどういう関係にあったんだ? それとも、吉富君と交際していたということはないのか?」



吉富は援助と交際を取り違えていることはないだろうか?