無言のまま会議室を出て行く私を見て流石の透もため息をついていた。


「私が片付けます」


透を宥めようとする蟹江さん。吉富さんも混乱している様子で専務相手にどう接していいのか悩んでいる様子だった。


「じゃ頼んだよ。1時間後にやり直しだ。」


そう言うと透は会議室を出て行った。


私の後を追ってきた透に腕を掴まれると空いている会議室へと連れ込まれた。


会議室へと連れ込まれるとドアの鍵を閉められた。


どういうつもりなの?


今更捨てた女になど用はないでしょう?


「どういうつもりだ。」


透の怒りに満ちた顔を見せられても私は怖くもなんともない。


辞めさせたければ辞めさせればいいのよ。


こんなところで私情を持ち出したのは透なのだから。


だからそれに私は応えただけ。こんな仕打ち何度受けても許せない。


私をこれ以上侮辱しないでよ。


「あら、専務ではありませんか。お気に召さなければバッサリ切り捨てるのは相変わらずですこと。」


透の目を睨みつけるとしっかり言い返した。


私は間違ったことは言っていない。文句あるなら言えばいい。受けて立つわ。


「いつこの会社に入った?」


やっぱり透は私がこの会社に入社したのを知らなかったんだ。


透は気まずそうに目を逸らした。


「あなたがいるなんて知らなかったのよ。知ってたら入社しなかった。
だから、話しかけないでくれる?私、あなたみたいな人と一緒にいたくないの。」


「それはこっちのセリフだ。おまけに感情的になって、あれじゃ仕事にならないだろ。」


感情的? それは透の方じゃないの? 私が全て悪いというの? 相変わらず最低な男だわ。


「あら、いつものように切り捨てるのだから問題ないでしょ?なんなら解雇でもなさいますか、専務?」


厭味ったらしく言ってやった。


透は私の存在が目障りなはず。きっと会社に在籍させることさえ嫌うはず。


「誰もそんなことは」


「会社の備品を壊したのよ。解雇でもなんでもすればいいわ。」


仕事を失くすと芳樹との生活に不安が残る。それでも、ここで透の姿を見て悔し涙を流していたくない。