「ところで時雨」
「ほい」
「随分とゆっくりしているようだけど、時間は大丈夫なのかな〜?」
その言葉に私はサッと壁にかかっている時計を見た。
丁度、カチッと音を立て、短針が8時のところを刺す。
「って、は、8時...⁈」
私は猛スピードで二階に上がり、身支度を整える。
机に置きっ放しの櫛で髪を束ね、お気に入りの黒いリボンでポニーテールになるようくくった。
そしてカバンを持ち、ダイニングテーブルに置いてあったお弁当と水筒をカバンの中に詰める。
「それじゃ、行ってきまーす!」
「はい、行ってらっしゃい。気をつけてね。」
私はまだ知らない。
大切で平凡な、この”日常”が、あんなカタチで壊れてしまうなんて...