私はトントントンと歩き慣れた階段を降る。


リビングに入ると、台所に立つエプロン姿のお母さんと、ダイニングテーブルで新聞を読むお父さんがいた。





いつもと、何ら変わらない情景。





私はお父さんに「おはよ〜」というと、お父さんも「おはよう」と返してくれた。


私はお父さんのことが大好きだ。

私のどんな質問にも真面目に答えてくれるし、勉強もみてくれる。


お父さんは忙しいから、大抵は夜にしか勉強をみてもらえない。


お父さんもお仕事から帰ってきたばっかりで疲れているはずなのに、


そんな姿は微塵も見せず、私と向き合ってくれる。


私の自慢のお父さんだ。



ひょこっと台所からお母さんが顔を出してきた。

「あら、おはよう時雨。さっき、上の階から変な物音が聞こえたけど...、まさか”また”壊したんじゃないでしょうね?」

お母さんは尋常じゃないほど黒いオーラを出している。

「え...、あ....、ま、まっさかー。もうあんな事しないよー。」

そう言いつつ目を逸らす。

「本当かしら。まあ、とにかく今はご飯食べちゃいなさい。遅刻するわよ」


「ふぁ、ふぁーい」


もちろん、お母さんも大好き!

...だけど、怒るととてつもなく怖い。

私はヒョイとトーストをオーブンから取り出し、お母さん特製の苺ジャムを塗りたくる。

私はそれを頬張ると、お母さんは「美味しい?」と尋ねてきた。

「ふぉひほんおいひぃひょ!」

もちろん美味しいよ!と言いたかったのだが、パンを口の中に詰め込んだせいで上手く言えなかった。

それでも、お母さんには伝わったようで、「ふふふ...、ありがとう」と、微笑みを浮かべていた。



愉快な性格で料理が上手な自慢の母と、真面目で誠実な自慢の父。


私は本当に、この二人が大好きだ。