「うぅ、イッテー……璃子ちゃん、俺の耳ちゃんとある?」

 目を潤めさせて上目遣いする洸君にドキドキする。ああ、なんて可愛いんだろ。それは反則すぎる。

「あ、あるよ、大丈夫っ」

 確かに赤くなっている彼の耳に氷の入った冷たいグラスを、そっと当ててあげる。

「へへ、気持ちいい」

 ふにゃっと笑った顔も可愛いんだ。

「あーあー、独り身は寂しいもんだな、なぁユイ?」

「うっさいわね、バカ親父」

 缶ビール片手に皮肉な笑みを浮かべた彰さんが向かいに腰を下ろし、ユイちゃんは表情一つ変えないで父親を罵る。まさに一触即発な雰囲気に包まれたが、そんな事を気にもしてない様子の万里子さんがボウル一杯に盛ったサラダをドンとテーブルに置いて、

「さ、沢山食べてね。頂きます!」

 その声にみんなで手を合わせて、万里子さんお手製のご飯を頂く。

 男の子らしく口いっぱいに唐揚げを頬張る洸君、ほろ酔い気味の彰さんは万里子さんとユイちゃんに白い目で見られ、私は豆腐入りのハンバーグや、春巻きの作り方を聞きながら味わって食べた。