ひっつめ髪に、とてもおしゃれとは言えない眼鏡。学校紹介のパンフレットにでも載っていそうな制服の着こなし。

「せっかく可愛くしても、それじゃあ意味ないよね」

 高校に入学して以来、初めての食堂。隣に座るユイちゃんは私の姿にまだ何か言いたげな顔を向けながら、たまごサンドをかじった。

「これでも初めは学校に来るの緊張したの。ほら、この前髪が……」

 前髪だけは下ろしておくしかなくて、くるんとした毛先は引っ張ってもまた元通りに戻る。

「だから、いっそ髪全部下ろして、眼鏡外してさ」

 たまごサンドを机の上に置いて、眼鏡を強奪しにかかる彼女との攻防が始まろうとしていると……

「速川、1人じゃないなんて珍しいな」

 声がした途端に私の体は硬直した。なのに、心臓だけは暴れだして、身体中が熱くなる。

「立花こそ、両手に花を添えてないなんて珍しい。しかもわざわざここに声をかけてくるとか……」

「空いてる席がここしかなかったんだよ、良いだろ?隣」

 すぐ近くで、こんなにも近くで彼の声が聞こえているのに、私は顔を上げられない。いや、きっと、彼と目が合ってしまえば卒倒してしまうんじゃないかと思う。

 で、でもこんな機会そうあるわけじゃないから……