「璃子ちゃん、着いたよ」

「えっ!?」

 気づけばずっと考え事をしていて、前を向くと私の家があって。やっぱりこのまま伝えずに?だけど、友達のままなんて。駄目だ、早く決めなきゃ洸君帰っちゃう!

 焦れば焦るほど言葉が出てこない。だけど、沈黙を破ったのは洸君の方だった。

「璃子ちゃん、今日、なんで泣いてたの」

 洸君の言葉が初め理解できずにいたけど、ユイちゃんと話している時のことだと分かって、慌てて「何でもないの」と言う。

「あれは、洗剤が目に入っちゃって」

 咄嗟に出た嘘。誤魔化すように笑うけど、洸君は腑に落ちないといった表情だ。

「洸君?」

「俺、その気がなくても誰かを傷つけることがあるから、璃子ちゃんにも何かしたのか、ずっと考えてた。今まではそれで嫌われても、これが俺だから仕方ないって諦めることの方が多かったけど、璃子ちゃんには嫌われたくない」

 本当に何でもない?と真剣に聞く洸君。私は煩くなる鼓動が苦しくて、答えられない。

 だって、そんなこと言われたら私、勘違いしちゃう。私は洸君にとって特別なんじゃないか、私と同じ気持ちを向けてくれてるんじゃないか。……でも。