夏の夜に鳴く虫は、どこか寂しげで悲痛な叫びのように胸を焦がす。隣で、洸君が星を見上げていた。

 初めて彼に恋をして、陰から見ているだけだった人。今は手を伸ばせば触れられる距離に居て、なのに、私はさっきからそれが出来ないでいる。

 彩音に頑張るって言ったものの、いざその時が来ると緊張しちゃうな。

 家まで送ってくれるという洸君と二人きりで、今まさに“告白”のチャンスなんだと思う。

 だけど、告白ってどんな感じに言えば良いの?

 『好きです、付き合ってください』はなんか、ありきたり過ぎだし、『誰よりもあなたを愛しています』とかもドラマっぽ過ぎて変?

 なにより、洸君は告白され慣れてるだろうし、素敵な女の子たちからの素敵な告白をたくさん聞いてるんだろうと思うと、恋愛初心者の私の下手くそな告白なんて……

 って、だめだめ。またネガティブに考えちゃって。そう、当たって砕けろよ。洸君がそもそも私の告白を受け入れてくれるはずがない、気持ちだけ伝えれば良いの!

 あ、自分で言ってちょっと落ち込むかも。やっぱり、気持ちを隠したままこうして友達でいた方が良い?