私のタイピングが遅過ぎるのか、片瀬さんが早過ぎるのか…。

カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタッ。
カチッ。
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ。

よし、私もやるぞ。

カタ、カタカタカタカタ、カタカタカタカタ、カタカタカタカタ。

これが私の限界です。

何でノンストップであんなに打てるんだろうか。

片瀬さんが普通じゃないと思いたい。
あの速度で入力続けたら私の指が死んでしまうと思う。

隣は気にせずに自分の仕事しよう。

「よしっ。」

気合いを入れてキーボードに手を置いた時、

「今泉、彼氏出来たの?」

隣の高速タイピング音は止まらぬままで片瀬さんが声をかけてきた。

「えっ?」

私には高速タイピングしながら(私のは高速じゃないけれど)話せる余裕は無いので、思わず片瀬さんを見る。

「金曜日。二次会に行く途中で結城さんから聞いた。」

相変わらず画面に目は向いたままタイピングは続いている。

美咲ちゃーん、何を隣の席の人に話してくれてるのーー!!

思わず美咲ちゃんの席を見るとあいにくの不在。

美咲ちゃんのおバカっ!
何て心の中で美咲ちゃんに悪態をつきながら、何て答えようかフル回転。

1.冗談ぽく返す
2.素直に話す
3.先輩だけど思い切って無視