「…それは、とても嬉しいですが」

「うん?」





ガチャリ…と音を立て、彼は立ち上がる。





「雪愛は、他の男を見るじゃないですか。
その時、僕はどうすれば良いのですか?」

「……」

「僕だって、雪愛を他の男に触れさせたくない。
だけどこの先、どうしたって雪愛は男と関わる。

この世に、男女がいなければ、いずれこの世界から人はいなくなる。
それは、雪愛…雪愛もいなくなることに通じるんだよ?」





彼は、キミは、貴魅は、一筋の雫を流しながら、笑っていた。





…懐かしい。

この笑顔。

私が、彼に恋した笑顔だ。






「僕は、雪愛を、他の男に会わせたくない。
だから僕は、雪愛をずっと、稲生に向けて考えた計画を実行する前から、雪愛を監禁しようと決めていた。

それが、僕にとっての、究極の愛だったから。

だけど、今雪愛に言われて気が付いたよ。
監禁しても、2人の世界にはならないし、2人で幸せになれない。

幸せになるのは、相手を監禁することに成功した、たった1人だけ。
このままなら、幸せになれるのは、雪愛だけ。
雪愛は一生僕を、雪愛の世界に閉じ込めておくことが出来る。

だけど僕は、幸せじゃない。
むしろ、毎日不安でいっぱいだ。




雪愛。




2人で、一緒に、幸せにならないか?」