「う…噂……?
…お前の母親が…父親を監禁しているっていう、あの噂か…?」

「そう。
知っていたんだね?」

「ほ、本当なのか…それは…」

「…冥途の土産に教えてあげるネ。
それは全部、本当だよ」





クスクス、楽しげに笑うカレ。

笑う、嗤う、哂う。

…笑うからこそ、カレは怖い。





「冥途の土産って…どういうことだよ…」




止まらない血のせいで、視界が段々揺れてくる。

…もうすぐ死ぬのか、俺は……。





「だってキミ、僕に殺されるんデショ?」

「……ッ!
やめろっ…殺さないで…くれ…」

「僕が憎い?」

「当たり前だろッ……」

「ふーん、そうなんだ。
別に僕を恨もうが恨まないが、キミの勝手だけどね。

…本当に恨むべきは、僕なのかな?」





本当に恨むべきは、若王子貴魅?

稲生は回転の遅くなっている脳を必死に動かした。