貴魅は狂ったように笑い続けながら、稲生の短髪を出来るだけ掴んだ。

そしてそのまま、稲生が吐き出した嘔吐物の上に、稲生の頭をぶつけた。





「うああああああああッ!!」





頬に当たる、嘔吐物の感覚。

鼻を掠める、酸っぱい匂い。

顔を上げようにも、貴魅が押さえていて、上げることが出来ない。





「貴様ァ…それでもォ…人間かァ!?」

「…ソレ、お前が言うの?」




貴魅が笑うのを止め問いかける。





「お前…普通じゃねぇよッ…!
んな拷問みてぇなこと、笑いながら出来るんだからよッ…」




カレの、馬鹿にしたような鼻で笑う声が聞こえた。





「確かに僕は普通じゃないよ?
それ、中岡サンならわかっているはずだよね?

だけど、そう言う中岡さんも普通じゃないと思うよ。
普通の人間は、監禁なんてしない。
好きだからって、閉じ込めようとなんてしない。

中岡サンならわかってくれると思ったんだけどなァ。

雪愛を愛しているなら、僕の気持ち、わかるよね?」






グリグリと強く、嘔吐物に頬をすりつけられる。

気持ち悪いその感触に、稲生は吐き気しか覚えなかった。