「ぎ、あぁああああッ!!」




ストン、とまるで調理でもするかのように、カレは稲生の左耳を切り落とした。

ベタンッと音を立て、使い物にならなくなった左耳が冷たい倉庫の床に落下する。





「お腹空いたでしょう?」





突然変なことを言いだした貴魅は、手袋をした手で、ソレを掴み、稲生の左目の前にかざした。





「……ウッ……」




自分の切れた左耳を見せられ、稲生は吐き気を催した。

しかしそれを察知したのか、貴魅は素早く稲生の口をガムテープで封じた。




「ココの倉庫、借りているんですよ。
汚されちゃあ、困るんですよねぇ…。
血ぐらいでしたら、簡単に始末出来るんですけど。

嘔吐物を掃除するの、大変ですし、嫌ですから。
必死に耐えていてくださいね?」




涙と鼻水でグチャグチャになった稲生を見ながら、カレは稲生の左耳を、持っていたナイフに突き刺した。

突き刺したまま、貴魅は稲生の口元へ持っていく。

そして、先ほど封じたはずの口についていたガムテープを、乱暴に外した。

吐き気なぞ、恐怖で飛んで行っていた。





「どうぞ?」

「……は?」

「お食べなさい」




カレが稲生に食べろと言っているもの。

ソレは間違いなく、稲生の左耳だった。